2008.3.12: 平成20年 予算特別委員会
〇尾崎委員

まず最初に、新銀行東京についてお伺いいたします。 先日、自民、民主、公明の三派合同による津島さんに対するヒアリングの中で、私は、そもそも現在の経営難の状況を生み出したのはどこに問題があったのかということをお聞きいたしました。 ビジネスモデルそのものに問題があったのか、あるいはビジネスモデルはしっかりとしていたが、そのプランを実行できなかった職員の質に問題があったのか、あるいは執行部である経営陣に怠慢、ずさんがあったのかということをお尋ねいたしました。 津島さんのお答えは、ビジネスモデルそのものに問題はなく、そのプランどおりに業務を遂行していれば、今日のような状況を招くようなことはなかったという回答でありました。 金融業を営むビジネスモデルとして、通常、銀行は借り手である事業者や個人に対して、融資プランが支援的なものであっても担保をとるわけであります。一方で、金利の高い高利貸しは、物的担保をとらなくても、人的担保や徹底した回収方法により、確実に貸したお金を回収することで経営を成り立たせています。 中小事業者支援融資といえば聞こえはいいですが、高利の金融業者に手を出し、再建した中小事業者などはほとんどないといっても過言ではないと思います。農業に例えるならば、山を焼き払って、収穫が途絶えれば、また次の山に火をつける焼き畑農業であります。しかし、これでは社会的にもよくない。ましてや、経済活性化の下支えとなる中小事業者の支援、育成などとはほど遠いといえるわけであります。 いつまでもこの焼き畑農業をしていたのでは、真の中小事業者育成支援にはならない。かといって、当時の大手金融機関は不良債権処理が一向に進まず、中小企業金融市場には参入していなかったことから、時代に即応して田畑を耕し、肥料を上げ、収穫を上げる近代農業のような理想の融資が模索をされてきたわけであります。 新銀行東京は、理想の融資を模索する一つの挑戦だったのかもしれませんが、そのビジネスモデルが果たして金融業界で通用したのでしょうか。 昨年の予算特別委員会の代表質問で、我が会派の田中良幹事長が高橋是清の言葉を引用し、銀行家と資本家は違うと述べ、銀行家である以上、確実に回収の道を模索し、収益を上げることが必要だと質問したわけであります。 果たして都は、新銀行東京がこのマスタープランで本当に収益を上げられると考えていたのでしょうか、伺います。

〇佐藤産業労働局長

マスタープランは、コンサルティング会社、また監査法人、IT関連会社、カード会社、それから金融関係会社など最大百名規模のスタッフが検討してつくり上げたものであります。 専門家が知恵を出し合って中小企業への円滑な資金供給を実施する、そういう新銀行創設の理念を実現するために検討を重ねた結果としてのプランであります。銀行としての設立プランでありますから、利益を上げられないと考えてつくるプランなどはあり得ません。

〇尾崎委員

利益を上げられないと考えてつくるプランなどないと開き直られても、じゃあ現実に利益は上がっていないだけではなく、経営難に陥っていることをどう説明するんですか、これを。答弁を求めます。

〇佐藤産業労働局長

つくったマスタープランと経営の結果との違いの話だと思いますが、マスタープランは今申し上げましたとおり、いろいろな専門家で、それには旧経営陣も多数参画して平成十六年二月に策定されたわけであります。 その後、不良債権処理により体力を回復してきた大手銀行、これが貸し渋り、貸しはがしといった、それまでの融資姿勢を一変させて中小企業金融に積極的に参入してきた、こういうのは今でもいわれているところでありますが、そういう状況がありまして、新銀行東京開業直後から、そういう意味では、経営環境としては非常に厳しい競争環境にさらされたということ、そして、先般の調査報告書でも明らかになりましたとおり、旧経営陣の非常識な経営、そういうものがありまして、結果として経営を軌道に乗せることができなかったと、これが今の現状だと思っております。

〇尾崎委員

大手銀行が中小企業金融市場に参入してくるなどということは、これは当時からさんざん議論されてきたことなわけです。それでもなお市場があるといっていたのは、これはほかでもない東京都なんですよ。 ですから、四百億円の増資の是非を慎重に今定例会で議論をしているわけであります。それには、マスタープランの検証が必要不可欠なので聞いているんですが、中小企業への円滑な資金供給を実施するということであれば、何も銀行というところでなくても、中小企業向けの制度融資、つくればよかったんじゃないですか。 平成十五年七月一日の本会議において、都議会民主党の代表質問で、東京都が出資したノンバンクという形態でも、中小企業への資金供給が可能なのではないかという、こうした質問に対して、石原知事は、日本経済再生のためには、眠っている巨大な個人金融資産が生きた資金として中小企業に流れる仕組みが必要だと述べているんですね。また、単なる中小企業の活性化だけではなく、統一ICカードなどを活用した顧客の利便性の向上も当然ねらっていることから、ノンバンクは不可能だと答弁をしております。 仕組みについてはそういうことなんでしょうけれども、例えば商工ローンなどとリスクのとり方がどう違うんですか、よろしくお願いします。

〇佐藤産業労働局長

商工ローンは、一般的な銀行の融資と比べまして、比較的高目の金利が設定され、また担保を徴求することで貸し出しに伴うリスクに対応しているというものでございます。 一方、新銀行東京の融資につきましては、融資先の企業を固まりとしてとらえる無担保のポートフォリオ方式を採用する、そういうことで、全体の中で貸し倒れの損失を吸収して、あらかじめ設定しましたリスクの範囲におさまるように債権の管理を行うところに、これに特徴がありますし、違いもあります。

〇尾崎委員

商工ローンは、無保証で、融資実行が早く、現地調査を行わないとおっしゃいますけれども、モデル的には新銀行東京と同じような気がするんですね。新銀行東京の売りは、無担保、無保証、スピード融資というふれ込みで発足したわけでありますけれども、金融業では、この無担保、無保証という制度をとれば金利が高くなるのは当然であります。 また、先ほどの高利貸しや商工ローンの話ではありませんけれども、融資の審査や回収に労力をかける場合、その分、金利を上げなければ収益が出ないわけであります。逆のいい方をすれば、物的担保をとれば、審査の過程や回収業務を簡素化しても、債権焦げつきの損失を抑えることができるわけであります。つまり無担保、無保証制度を実施しておきながら、審査を軽視して、スコアリングモデルに頼って審査をするという簡素化されたスピード融資は、二律背反していると私は考えます。 加えて、回収業務のノウハウに乏しいようでは、金融業としては成り立たないことは素人のような私でもわかることであります。だからこそ、当時の既存の金融機関の中で、新銀行東京のようなビジネスモデルを実施しているところはほとんどなかったんじゃありませんか。ある意味では、知事のおっしゃるとおり、これは本当に全く新しい銀行であるとの指摘は、至極的確なわけであります。 先ほども申し上げましたけれども、金融機関の収益を左右するのは融資審査と回収業務であります。特に、新銀行東京のビジネスモデルにおいて、スコアリングモデルは事業の成否を分ける命綱であったわけであります。 そこで伺いますけれども、初代代表執行役である仁司さんは、三月十一日の読売新聞の報道によれば、スコアリングモデルのプログラムは、必ずしも実態を反映していなかったと語っておりました。そもそもこのスコアリングモデルは、いつ、だれが、どのような依頼を受けてつくったのか、お答えをいただきたいと思います。

〇佐藤産業労働局長

先ほどもご答弁申し上げましたけれども、コンサルティング会社や監査法人、IT関連会社ですとかカード会社、金融関係会社などの最大百名のスタッフが検討してつくり上げたのがマスタープラン、このもとに、平成十六年四月に発足した新銀行東京が、開業の期間までの準備期間中にこの詳細条件等を検討して構築したと、これがスコアリングモデルでございます。以上です。

〇尾崎委員

果たして、このスコアリングモデル、そしてビジネスモデルは、十分に検討されたんでしょうか。そして、知事は専門家にこれを任せたといっておられますが、このマスタープランを推進したのは知事じゃなかったんですか。知事は、新銀行東京の実績として一万三千社に融資を実行し、九千社の中小事業者の業績向上を挙げておられます。 確かに救済された事業者もいるわけでありますけれども、中には悪質な詐欺まがいの連中が新銀行目当てで群がってきて、融資を受け、倒産したといえば聞こえはいいわけでありますけれども、都民の税金を間接的に搾取をしていったわけであります。 その要因は、先ほど質問したスコアリングモデルという融資基準に問題があって、本来、このスコアリングモデルは、財務諸表を照らせば、機械的、自動的に融資の可否を判断していたと思いますけれども、知事のいう、六カ月もてばいいから貸せという事業者に対して、そのような恣意的な(発言する者あり)いや、これは知事じゃないです、わかっています。知事のいう、六カ月もてばいいから貸せという事業者に対して、そのような恣意的な判断が入る余地はあったんでしょうか。

〇佐藤産業労働局長

ポートフォリオ型の融資、これがスコアリングモデルを中心にされたというお話で、スコアリングモデルのみのようなお話ですけれども、マスタープランを見ていただくとわかるんですけれども、スコアリングモデルだけで審査をするような、そんな制度を最初から想定していたわけではありません。 スコアリングモデルで事業者の財務状況の情報を入れた後、その後定性的な評価を必ずやって、その上で審査に適格かどうか、そういう判断をして融資をする、これがマスタープランで考えている融資の審査の方法です。通例、定性的な評価をするというのは、外部信用情報機関の情報ですとか経営者などに関する定性評価、これに問題がない企業を融資対象であるとするということになっております。 また、新銀行の方が策定いたしました中期経営計画策定時に、当然細かい審査方法等を監督官庁に出すわけですけれども、定性評価が行われることが明記されているというふうに聞いております。スコアリングモデルだけに頼って審査を行うことが前提であったかのようなご指摘は当たりません。

〇尾崎委員

じゃ、聞きますけれども、もう一方で、開業当初、本店などの窓口に押し寄せた融資の申し込みに対して、新銀行東京は、営業日三日以内での回答を売りにしていたために、限られたスタッフが十分な現地調査を行えなかったことも、これは一因だと思うんですが、いかがでしょうか。

〇佐藤産業労働局長

実地面談とか実態調査が行われることなく、スコアリングモデルによる自動審査に過度に頼り過ぎたのが経営悪化の一因と考えております。

〇尾崎委員

だっておかしいじゃないですか、さっき局長は、スコアリングモデルだけに頼って審査をしてきたとの指摘は当たらないと答弁したんですよ。しかし、今の答弁では、経営の悪化の一因はスコアリングモデルに頼り過ぎたのが原因と。これじゃ、このビジネスモデルプランが間違っているといっているのと同じことだと私は思うんですよね。 先ほどから申し上げておりますけれども、このスコアリングモデルが新銀行東京の事業の成否を左右する生命線だったと私は思っているんです。 石原知事は、聞きますけれども、このマスタープランの肝であるスコアリングモデルをどのように総括しているんでしょうか。

〇石原知事

この作成に当たりましては、かなりの延べ時間、かなりの延べ人数をかけて作成し、金融庁のフィルターを通して金融庁の了承を得たと聞いております。

〇佐藤産業労働局長

マスタープランで新銀行が段階を踏んで発展していく、第一段階から第三段階まで、新銀行が着実な業務領域の選択と経営資源の集中という初期の段階から徐々に広げていく、こういう構想でもってマスタープランがつくられております。 そういう中で、スコアリングモデルについても、顧客情報の積み重ねによりまして、その精度を徐々に高めていくということが当然必要であったと思いますし、先ほど申し上げましたけれども、ちょっと誤解があるといけないので重ねますが、マスタープランで想定しておりましたのは、スコアリングモデルだけに頼ってやるというような審査の方法をマスタープランが記載していたわけではなくて、ただ実際にスコアリングモデルに頼り過ぎた、過度に頼り過ぎたという現実を、先ほど違う面での話をしたわけです。 そういう意味では、定性評価と一体となって行う審査のツールであったものが、過度に依存されて効果が出なかったという面があると思います。

〇尾崎委員

開業当初に顧客情報の積み重ねなどあるわけはないと推察するんですけれども、仮に百歩譲って、開業してからのしばらくの間はすぐに顧客が集まらないとしても、結局、今現在までにこの目標が達していないということは、そのマスタープランそのものに問題があったといわざるを得ないわけであります。 おとといの調査報告書を期待しておりましたが、石原知事が、六カ月もてばいいから貸せというめちゃくちゃな経営がなされたといっている割には、そのような具体的な記述は見られません。 デフォルト発生を容認したかのような常識を逸脱した業務執行の象徴的な事象として挙げている、融資実行実績に応じて年間最大二百万円の成果手当を支給したことや、朝礼等での非常識な言動を繰り返したことは、仁司さんの立場から見れば、大株主の石原知事が融資実績に不満を漏らしていたことに対する危機感のあらわれではなかったんでしょうか。 このことに対する分析がない限り、石原知事がいう旧経営陣にすべての責任があるとの指摘は、非常に一方的なようにも思えるんですが、仁司さんは本当に、この六カ月もてばいいから貸せといっていたんでしょうか。

〇佐藤産業労働局長

新銀行東京の調査委員会の調査報告書によりますと、過剰融資について、必要金額の確認や返済能力を重視せず、融資限度額いっぱいの融資を奨励したというふうにされております。 報告書に直接の記載はございませんが、融資実行後六カ月経過後に発生したデフォルトについては、成果手当を算定するもととなる融資実行額からデフォルトした金額を控除することなく、満額支給するという制度がありました。そのもとで、先ほど申し上げましたようなデフォルトを容認するかのような発言を繰り返した。このことで、営業担当者の間には、六カ月経過すればいいという意識を持たせたと銀行は判断しております。

〇尾崎委員

今の答弁では、仁司さんが直接いったということではなく、あくまでも行員に意識を持たせたということで、それも銀行側の一方的な判断ということなんでしょうか。それとも、東京都側から無言の圧力のようなものがあり、銀行が過剰融資を行い、大量のデフォルトを発生させたのだとすれば、経営陣のみに責任をなすりつけるというのは、余りにも無責任であると感じ得ないところであります。 冒頭に申し上げましたけれども、ビジネスモデルそのものに問題があったのか、あるいはプランを実行できなかった経営陣や職員に問題があったのか、あるいは出資者である都の責任はなかったのかを、まずつまびらかにしてからでなければ、この四百億円の出資の是非、再建策など、議論できようはずがありません。 しかしながら、今までの説明、答弁では、それが全く見えてこない中で追加出資を強引に推し進めるようでは、とても都民の理解を得ることなどできないと申し述べ、時間がないので次の質問に移ります。 今日の医療は、急速に進んでいる高齢化社会の到来の中で、都民の需要の増加と、それに加えて医師不足、特に都立病院のような大規模病院の勤務医が少ないことにより、医療制度の崩壊につながりかねないといわれている状況下にあります。 そうした状況下の中で、都議会でもたびたび、どうすれば必要な医療が適正に提供されるかが議論されてまいりました。 私は、調布市、狛江市の北多摩三区の選出でありますけれども、先日も同じ三多摩圏内である小平市で、救急車で搬送中の女性が受け入れ先の病院が見つからず死亡してしまうという大変痛ましい事件が起こりました。 医療崩壊を招く要因の一つとして、核家族化が進んでいるので適切なアドバイスを受けられないことなどにより、軽度の症状でもすぐ病院に行ってしまうケースによる病院のコンビニ化、また医師不足並びに看護師等のメディカルスタッフの不足等の課題があるわけでありますけれども、関連して何点かお伺いいたします。 私は、都立病院のような公的な医療機関は、収益性を最優先に求めるべきではなく、民間の病院では採算ベースでは厳しくなる部分を補完していくことこそが、都立病院設置の政策目的であり、本格的な医療崩壊が始まる前に、やはりしっかりとした医師確保の対策を立てていかなければならないと考えております。 そうした中で、都立病院の勤務医の待遇改善などを行っていくことはもちろん必要でありますし、全国の中でも都立病院に勤務する医師の年間報酬は最低レベルでありまして、昨年の本会議などでも、知事は勤務医の待遇改善は当然行っていくべきだとの答弁をしているわけでありますけれども、これがどの程度進捗しているのかお伺いをいたします。

〇秋山病院経営本部長

お話のような都立病院の医師の給与が全国自治体の中でも低いレベルにあったというのは、平成十七年度までのことでございまして、都ではその後、初任給調整手当や宿日直手当の増額などの処遇改善を講じてきております。 しかしながら、医師の採用環境がさらに厳しさを増すという中にございまして、都立病院医師の安定的確保、定着を図っていくためには、なお一層の改善が不可欠であるという認識のもとに、来年度開講いたします東京医師アカデミーの指導医に対します指導医業務手当、またリスクの高い分娩に従事した産科医師に支給する異常分娩業務手当の新設、初任給調整手当のさらなる増額など、給与の大幅な改善を図るための経費を、現在ご審議いただいております来年度予算に既に計上しております。

〇尾崎委員

報酬面はもちろんのことでありますけれども、本来、医師は患者の病状に全責任を持ち、治療の効果をより一層高めるためには、みずからのことはさておき、あらゆる手だてを尽くすという使命感の持ち主であります。長時間の診療にも、その使命感で意欲的に取り組んでいる方々がほとんどであります。しかしながら、昨今の病院における勤務環境の過酷さは筆舌に尽くしがたいものがあります。 先日、私は都立府中病院を視察してまいりましたけれども、医師だけではなく、看護師の数も絶対的に不足をしている現状があります。ERや夜間診療の状況も伺いましたが、ほとんどの看護師は患者の対応に追われ、現場では二人の看護師が看護ステーションで勤務をし、救急患者が殺到する時間帯などは総体的な対応ができない状況下にあります。 現在、ERは、電話で病状を聞いてから診察をするという制度でありますから、ひっきりなしにかかってくる電話も出ることができない状況にあるわけであります。こうした状況が続けば限界を超えることが推測をされ、バーンアウトして看護師をやめたり、勤務医から開業医に転身をするケースなども多々見られるところであります。 特に東京などの地域では、都市化が進行し、地域の中での生活が希薄になっていることもあり、地域でのかかりつけ医にかかるよりも、設備の整った病院を受診することにより安心を得たいという心理もあり、患者の多くが都立病院を含めた大きな病院を受診する傾向となっております。 こうした、勤務医が開業医に転身をしていく、あるいはやめていってしまう医師のインセンティブをどう維持していくのかが、医師不足に歯どめをかける喫緊の課題と考えますが、東京都としては具体的な取り組みを行っているのか、お伺いをいたします。

〇秋山病院経営本部長

まず、委員がご視察になりました府中病院のERでは、軽度から重度に至るさまざまな救急疾患に的確に対応するため、内科、外科を初めとしまして、五系列の診療体制を組んでおります。また、不足しているのではないかとご指摘のございました看護師につきましても、総数で約八十名、夜間でも十名以上の人員を配置するなど、手厚い体制でトータルな救急医療サービスを提供しているところでございます。 ERの特性上、一時的に救急患者が集中した場合などには、重篤な患者さんから診療するトリアージ、これを行いまして、適切な対応を図っておりますが、診察をお待ちいただくこともございますので、この点に関しましては患者さんに十分説明をして、ご理解をちょうだいしているというところでございます。 こうしたERでの勤務はもとより、多忙な医師のインセンティブ、これを維持して定着を図っていくためには、給与面、この改善に加えまして、勤務環境の整備も必要でありますことから、医師の過重労働を軽減するための医療クラークの導入や、子育てと仕事を両立して働き続けるための育児短時間勤務制度の活用、院内保育室の充実、さらには職務住宅借り上げの拡充、研究研修費の増額など、広範囲にわたる総合的な医師確保対策を実施することとしておりまして、既に来年度予算案に計上をしているところでございます。

〇尾崎委員

先ほどは医師の報酬面においての質問をいたしましたけれども、非常勤医師の勤務状況はもっと過酷な状況下にあります。非常勤医師は月に十六日出勤と決まっているわけでありますけれども、実際の現場の状況と申しますか、医療行為の特質として、九時-五時で勤務を終了するといった割り切りは実質的には不可能なわけで、休日出勤や過度の残業が常態化しております。 看護師も、先ほどお話をしたような現状で、夜間診療等に十分に対応できる状況ではありません。したがって、現在の非常勤の医師の待遇改善や、看護師不足の課題を解消していくことも急務と考えますが、お伺いをいたします。

〇秋山病院経営本部長

まず、非常勤医師につきましては、多忙な常勤医師を補完するため、夜間や休日にも勤務日を設定するなど、勤務形態の弾力性を生かした活用を図っているところでございます。 こうした非常勤医師の報酬は、職務の複雑性、困難性、責任の軽重に応じ、常勤医師の給与とのバランスをとって定めていることから、今回、常勤医師の給与を引き上げたことに伴いまして、非常勤医師の報酬の額の改定につきましても、現在、関係局と既に協議を行っているところでございます。 また、看護師につきましては、採用努力によりまして、年度当初には定数を超える人員を確保しておりますが、結婚、出産、育児等により、年度途中にそれを上回る離職者が発生する状況にございます。 このため、年度当初だけでなく、年度途中での採用も弾力的に行い、離職者の補完に努めるとともに、新卒看護師が短期間で離職するケースが多いというために、新卒看護師に対しまして臨床研修を実施するなど、この点に関しましても既に定着対策に取り組んでおります。

〇尾崎委員

現状は、こうした病院勤務医師、看護師の奮闘に対して、さらなる過重な勤務を求める事態となっており、医師の補充は急務であります。特に産科や小児科は救急患者が圧倒的に多く、対応するには一定の数の医師や看護師が必要です。 最初に質問をした医業収支比率のこの問題でいけば、私は、民間病院でカバーできない部分を行政がしっかりと補完をしていくことこそが、都立病院の政策目的だと信じてやまない立場でありますけれども、だからといって全く収支を考慮しないわけにはいきません。 国が診療報酬の改定を先般行い、七対一看護の診療報酬は引き上げられたわけでありますから、なぜ民間の病院に倣って、そのときに看護師の定数増加に踏み出さなかったのか、診療報酬の改定に柔軟に対応できない要素があったのか。七対一看護師の定数の枠組みをふやすことで診療報酬もアップをし、人件費を上回る収益を上げることが期待され、それにより収支比率も上昇する可能性があると考えますが、なぜ七対一看護基準を導入しないのか、所見を伺います。

〇秋山病院経営本部長

都立病院におきましては、患者の看護必要度等に応じまして看護師を適正に配置しておりまして、結果として一部の病院では既に七対一看護基準を取得しているという実態にあることを、まずご理解いただきたいと思います。 この基準は平成十八年度に新設されましたが、全国的な看護師不足の中で、大学病院などが大量に採用を行ったために、病院間の看護師確保競争、これを引き起こしまして、このことが一つの要因となりまして、平成十七年十二月に国が発表しました看護需給見通しでは、平成十八年に千八百五十人の、東京都で看護師の不足見込みであったものが、昨年十一月に都が策定しました需給見通しでは、平成十九年現在、これが三千人近くも不足しているという状況になりまして、看護師不足がより深刻化しているということがうかがえます。 こうしたことから、いわば看護師をふやしさえすれば収益が確保できる、この七対一の看護基準につきましては、来年度の診療報酬改定におきまして、看護必要度や医師の配置基準などが導入されますとともに、既存の十対一看護との診療報酬上の格差が縮小される方向で、既に見直しが行われております。 なお、約四百人の看護師を募集しております都立病院が、仮にご指摘のような七対一看護基準の取得を目指しました場合、さらに約三百人、合計で七百人の看護師を必要といたします。これを新卒看護師で確保いたしますと、例えば現在七校ある都立看護専門学校の卒業生すべてを採用しても、まだ不足することになりまして、現実的ではないというふうに考えております。

〇尾崎委員

看護師の確保が困難である現状は理解できますけれども、だからといってこのままの状況が続けば、一人一人の医師や看護師に今以上に負担がかかり、離職率は急増をし、都民が都立病院で診療を受けること自体が困難になりかねません。 そうした本格的な医療崩壊を招く前に、看護師確保に向けてあらゆる努力を行うとともに、非常勤やパートの看護師の積極的な活用を図っていくことにより、看護師の勤務状況も改善されると考えますが、所見を伺います。

〇秋山病院経営本部長

高度で専門的な医療を継続して提供するという都立病院の使命を果たしていくというためには、看護師を常勤で採用し配置していくこと、これが本来の姿であるという認識をしております。 このため、看護師の採用に当たりましては、看護専門学校への本部や病院からの働きかけ、数回にわたる説明会の開催、ホームページやポスター、雑誌等を通じた広報、看護学生の実習受け入れなど、年間を通じてさまざまな活動を行い、その確保に努めているというところでございまして、その結果、近年では、先ほど申しましたとおり、年度当初は定数を数十人上回る、こういう人員を確保できております。 しかしながら、年度途中での離職者が多いため、年度末に向けて必要数に不足が生じていきまして、中途でも採用し切れないということになってまいりますので、都立病院におきましては、常勤配置を基本としつつ、こうした常勤職員の不足を一時的に補うものといたしまして、弾力的な勤務形態を生かした非常勤やパートの看護師を活用し、マンパワーの不足に対応しております。

〇尾崎委員

看護師の確保を図るためには、定着、再就業対策が重要なことは喫緊の課題としてもちろんのこと、次世代を担う看護師の養成は、今お話にあったとおり、必要不可欠であります。看護師の絶対数が不足をしているならば、供給の面からの増員を考えていけば、都立看護専門学校の定員をふやすことが、都内の看護師確保のために必要ではないかと考えます。 現状として、少子化が進行していることから考えれば、定員数をふやすことが難しいことも理解をしておりますし、看護学校の定数の再編整備をしたのは七対一看護が導入をされる前の話であるわけでありますから、前向きにこの定員増について考えていただくことを意見として申し上げておきます。 東京都が全国に先駆けて取り組みをし、少しでも多くの子どもが看護師を目指す気持ちを持つよう、高校生はもちろん、中学生も対象として、看護師の仕事、役割などを啓発をしていくことが必要ではないでしょうか。所見を伺います。

〇安藤福祉保健局長

都立看護専門学校では、看護への理解と関心を深め、将来の進路決定の動機づけとするために、高校生を対象に一日体験入学を実施をしております。 このほか、地域の中学校が実施をする職場体験にも協力をいたしまして、中学生を授業や実習などに受け入れているところであります。 また、東京都ナースプラザにおきましては、都内病院などの協力を得て行っております一日看護体験学習についても、これまでの高校生に加えまして、今年度より中学生も対象として実施をしているところでございます。

〇尾崎委員

続きまして、介護保険制度が二〇〇〇年四月に導入をされてから早くも八年が経過しようとしております。この間、二〇〇六年には大きな改定が行われ、制度全体を予防重視型システムに転換をするとともに、地域密着型サービス体系が創設をされました。 都では、平成十八年度から平成二十年度までを計画期間とする東京都高齢者保健福祉計画を策定し、一方、私の地元の調布、狛江市でも、介護保険事業計画を策定しております。 東京都高齢者保健福祉計画は、老人福祉法第二十条の九に基づく老人福祉計画や、介護保険法第百十八条に基づく介護保険事業支援計画の性格を有していると理解をしております。とりわけ、介護保険制度においては、区市町村が保険者でありますが、都は広域的な観点から必要なサービス基盤の整備を図ることとされています。特に特養ホーム等の整備は、区市町村の保険者や事業運営の主体である社会福祉法人にゆだねているだけでは、その確保が困難となっているのではないでしょうか。 そこで、まず、東京都全体で特別養護老人ホームの待機者が何人なのか、お伺いをいたします。

〇安藤福祉保健局長

平成十二年度の介護保険制度の実施に伴いまして、特別養護老人ホームの利用については、措置から直接契約に移行しましたことから、いわゆる待機者の概念はなくなっております。 各区市町村は、介護保険事業計画の策定に当たりまして、入所希望者などを把握しておりますが、都としても、広域的な観点から三年ごとに調査を実施しておりまして、平成十六年度の調査における入所希望者の実数は約四万一千人でありました。 なお、この約半数は、介護保険施設、病院、社会福祉施設等で生活をしておりまして、また、入所希望者の中には要介護度が軽度の方もいるなど、必ずしも特別養護老人ホームに入所が必要な数をあらわしているものではございません。

〇尾崎委員

また、特別養護老人ホームと介護老人保健施設の、第三期東京都介護保険事業支援計画におけるそれぞれの整備目標に対する実績見込みをお伺いします。 介護保険事業は、国が定める介護報酬を基本に運営されるわけでありますけれども、介護報酬は三年ごとに改定をされるため、この間二回の改定がありましたが、施設の報酬単価は連続してマイナス改定であります。 このことにより、特養ホームを初めとする介護保険施設の運営は、軒並み経営が厳しく、高齢化は進展しても施設整備は進まず、さらには福祉人材の雇用の悪化やサービスの質の低下を招き、このままでは介護保険事業は危機的な状況が続くと危惧をしております。 平成二十年度は、現行の高齢者保健福祉計画を改定し、新たに第四期計画を策定することになるわけですが、これまでの地域密着型サービスについて、代表的なサービスの種類の整備実績についてお伺いをいたします。 〔大沢副委員長退席、委員長着席〕

〇安藤福祉保健局長

まず、第三期介護保険事業支援計画におきます特別養護老人ホームの整備状況でございますが、平成二十年度の利用者見込み数が三万六千六百五十人に対しまして、二十年度末実績見込みは三万五千六百三十三人であり、介護老人保健施設の整備状況は、利用者見込み数一万八千九百十五人に対しまして、実績見込みは一万七千百十九人でございます。 次に、平成二十年三月一日現在で、主な地域密着型サービスの整備実績は、認知症高齢者グループホームが定員三千八百六十四人、小規模多機能型居宅介護は三十事業所、夜間対応型訪問介護は同じく三十事業所、認知症対応型通所介護は四百十五事業所でございます。

〇尾崎委員

今までのお話で、私は、東京都全体としてまだまだ整備が進んでいないと考えます。やはり都は、介護保険事業支援計画を策定する義務を有しているわけでありますから、特別養護老人ホームの施設整備にもっと積極的に取り組み、区市町村を強力に支援することが必要であると考えます。 私は、昨年の六月の財政委員会において、都の未利用地の活用ということを質問させていただきましたが、やはり都は区市町村の施設整備を強力にバックアップをするために、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、認知症高齢者グループホームの建設に関して都有地の積極的活用を図るべきと考えますし、また、施設建設に対して建設費補助を引き上げるべきと考えますが、見解をお伺いをいたします。

〇安藤福祉保健局長

昨年十二月に公表いたしました東京都地域ケア体制整備構想では、療養病床の実態調査や医療機関の転換意向を踏まえた療養病床の転換推進計画を策定をいたしました。 都では、医療機関によります介護療養病床から老人保健施設などへの転換を支援するため、独自の補助を行ってきたところであります。引き続き、医療機関の意向等を踏まえながら、療養病床の円滑な転換を支援していきます。 次に、都はこれまでも、未利用の都有地の減額貸付によります介護サービス基盤の整備促進に努めてまいりました。 整備費補助についても、特別養護老人ホームや介護老人保健施設については、平成十八年度に国の交付金は廃止をされましたが、都では引き続き、従来の水準を維持した補助を実施をしてまいりました。 また、認知症高齢者グループホームにつきましては、国の交付金に上乗せした補助を行うなど、独自の補助を実施をしております。 さらに、平成二十年度から、施設の地域偏在を解消するため、区市町村の高齢者人口に対する施設定員数の割合に応じて補助単価の見直しを行うこととしております。

〇尾崎委員

また、都営住宅については、私の地元の調布市でも、緑ヶ丘団地等のかなり規模の大きい老朽化団地もあります。建てかえにより特別養護老人ホームの建設用地を生み出すことなどにより、整備を進めるべきと考えますが、見解を伺います。

〇只腰都市整備局長

都営住宅の建てかえ時の特別養護老人ホームの整備につきましては、都営住宅建設に関連する地域開発要綱に基づきまして、地元区市と協議し、支援してございます。 今後とも、建てかえに当たりましては、敷地の状況などを勘案しながら、地元区市や関係局と連携し、適切に対応してまいります。

〇尾崎委員

やはり今後は区市町村とも連携を密にし、施設整備に最大限の努力を払っていただき、特別養護老人ホームの整備については、土地取得のための助成を復活させるべきと考えますし、また、民有地の取得助成が困難であるならば、積極的な都有地の活用をしていくことを最後にお願いをいたしまして、私の質問を終わります。
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