2006.06.14 本会議 一般質問
○三十番(尾崎大介君)
多摩産材の活用、取り組みについてお伺いいたします。 まず都としては、本年四月から始まった花粉の少ない森づくり運動において、向こう十年間で百八十万本の杉、ヒノキの伐採が計画されているわけですが、その中から材木として利用できる多摩産材の需要拡大及び市場流通の仕組みなどの整備が不可欠であります。 そこで、多摩産材の住宅建築の材としての使用や、さらに公園や学校など公共施設等における他の活用方法が検討されているのか、所見を伺います。 次に、具体的な施策として、多摩産材認証制度と東京の木・いえづくり協議会というものがございます。こうした施策により、多摩産材が市場において割安に供給をされ、一般に普及していけば、現在進行中の東村山本町プロジェクトという、知事の良質な住宅を安価に提供したいという思いから始まった重点プロジェクトの視点から見ても、非常に意義ある施策と思われますが、その内容、仕組み等については少しわかりにくい部分があります。 まず、多摩産材認証制度については、本制度のかなめの認証機関である多摩産材認証協議会の構成及び仕組みがいま一つ明確ではありません。社団法人全国林業改良普及協会の資料によると、京都府や群馬県などはそれぞれ府と県が直接認証団体にかかわっておりますし、愛知県の例では、認証機関として第三者のNPOが担っております。本協議会の場合、その構成メンバー及び認証の仕組み、都のかかわり方はどうなっているのか、また、今後の当制度への事業体などの積極的な参加の可能性について、所見をお伺いいたします。 次に、もう一つの施策である東京の木・いえづくり協議会についてですが、昨年十二月の都の報道資料によれば、優遇融資制度、とうきょうの森のいえを創設されていますが、融資条件として、本協議会会員が建築にかかわり、使用する木材の五〇%以上を多摩産材とすることとなっております。消費者である都民にとっても、多摩産材の知識や経験のある協議会の会員に希望に沿う住宅を建設してもらうことは非常に安心でき、さらに融資制度が受けられるとなれば、よりありがたい制度です。 現在協議会メンバーである工務店は十九社ということですが、融資条件が協議会の会員に限るということであれば、多摩産材に関する知識や経験を有するなどの条件のもとで、今後協議会の会員をふやしていく必要があると考えます。 また、この制度により、花粉の少ない森づくり運動で切り出される予定の多摩産材が有効に活用されることは、産業振興のみならず、環境面にも貢献することにもなります。 かような背景も踏まえ、この協議会の現状がどうなっているのか、また、今後より一層の組織の拡大が不可欠と考えますが、所見を伺います。 次に、多摩産材に関連し、木質バイオマスの活用についてお伺いいたします。 先ほど申し上げた花粉の少ない森づくり運動においての樹木伐採計画では、当然ながら利用できない木の量もかなりの量になると思われます。一方知事は、東京の温暖化対策として再生可能エネルギーの活用をうたっており、また国においても、本年三月三十一日付で、バイオマス・ニッポン総合戦略の改定も閣議決定されております。 木質バイオマスは生物の光合成によって生成した有機物ですが、環境にも優しい、非常にすぐれた持続可能な資源であります。先ほど述べた利用できない木とともに、多摩産材の材木製造工程における端材等も含め、これらを現在民間業者において生産がなされている木質ペレットストーブやボイラーなど、木質バイオマスエネルギーとして利用することも可能と考えます。 平成十四年に東京都農林水産振興財団においては、木質バイオマスエネルギー事業化調査を行っておりますが、調査後の現状はどうなっているか、またエネルギー利用のみでなく、木質チップを利用したバイオマストイレなどへの活用など、今後の木質バイオマスに対する都としての取り組みについて、所見をお伺いいたします。 以上、多摩産材、木質バイオマスの件に関して、もう少し大所高所からの東京における森林産業の総合的なグランドデザインを描き、特に、先般申し上げた多摩産材の商品としての需要拡大及び市場流通の仕組みの整備は重要であることから、そのための調査や横断的なビジョン策定へ向けての取り組みなども検討してみてはいかがという意見をつけ加えさせていただき、次の質問に移ります。 二〇〇七年には、全国で約七百万人、首都圏でも百八十三万人の団塊世代の退職が始まると予想されています。これらの定年退職者に対して意義ある第二の人生を送っていただく方策が必要かと思います。 最近では、定年退職者のレクリエーションのあり方や地域活動へのかかわり方など、さまざまな議論がなされています。その一つとして、森林や農地を活用して豊かなスローライフを実現するために、多摩地域の森林や農地で、多くの退職者が利用できるクラインガルテンのような滞在型農園の整備が必要だと考えます。クラインガルテンにおいて、退職者と地域住民やNPO等との活発な交流が生まれれば、社会とのかかわりが切れることなく、意義ある第二の人生を送ることができると思います。 また、こうしたクラインガルテンで炭焼きや竹林の手入れ、杉、ヒノキの伐採、広葉樹の植樹体験などと組み合わせれば、副次的効果として先刻の花粉の少ない森づくり運動の一環にもなり、ひいては森林環境の保全にもつながっていくと考えます。 現在、檜原村において、共同村星の見える丘プロジェクトという試みが、都内の団塊世代を中心にしたNPOや個人のグループなどで始まっております。具体的には、クラインガルテンなどを自分たちの手でつくり、高齢化して手入れが行き届かない山林を借りて植樹や炭焼きを行うなど、共同村で週末を過ごして、地元住民との交流を深める人も出てきています。 このような活動は現在個人のレベルによって行われていますが、最近の活動の広がりやその社会的な役割を考えれば、地元自治体や都が積極的にかかわることにより、より多くの団塊世代の方々が今後森林再生、環境保全活動などさまざまな社会貢献の機会を得ることが可能になるのではないかと考えます。 そこで、多摩地域におけるクラインガルテンについて、その現状と今後の都の支援について、お伺いいたします。 次に、地球温暖化対策についてお伺いいたします。 東京の深刻な大気汚染については、近年大きく改善が進む一方、自動車から排出されるCO2は、都内の総排出量の約二割を占め、依然として増加傾向にあり、自動車部門のCO2排出抑制対策は、今後も取り組みを強化すべき課題となっています。 都は今年二月に新戦略プログラムを発表し、自動車からの地球温暖化阻止を掲げ、新自動車環境管理計画書制度については、これまでの計画書制度を改正し、四月から導入されたもので、運送事業者などのCO2削減の取り組みを促すものと伺っております。既存の制度を活用することにより、早期に効果があらわれることを大いに期待しておりますが、今回の新しい計画書制度の内容とそのねらいについて、所見をお伺いいたします。 また、この計画書制度によって、運送事業者などの積極的な取り組みを引き出していくためには、まじめに取り組む事業者に対して何らかのインセンティブが働くことが重要と考えますが、所見をお伺いいたします。 こうした対策のほかにも、自動車からのCO2排出削減を進めていくために、天然ガス車などの導入を進めるためには、インフラとしての天然ガススタンドなどの設置も必要であります。国や都は、天然ガススタンドの設置に対して補助を行うなど、支援策を講じてはいますが、私の地元でもある調布圏内のように、まだスタンドのない空白地域もあることから、天然ガス車の導入、普及を進めるため、そうした空白地域の解消に向けて一層努力されることをあわせて要望し、最後の質問に移ります。 昨今において、ロハスという言葉がよく聞かれます。それはビジネスライセンスとして使われておりますが、その本質は、現在社会問題化している格差社会、勝ち組負け組という価値観とは異なり、地球環境保護と人間の健康を最優先し、持続可能な社会のあり方を志向するという考え方であります。 さて、このような考え方は、これまで私が質問してきた多摩産材、地球温暖化問題等をも包含する概念ではないかと思います。本定例会冒頭における知事の所信表明の中の、環境基本計画の改定での快適で安心して住み続けられることのできる都市を目指すことや、「東京都環境白書二〇〇六」での持続可能な都市づくりは、このライフスタイルに通ずるものであると考えます。 また、先ほど触れた二〇〇七年問題で、退職される団塊の世代の方々の第二の人生において、このようなライフスタイルが可能となるようにしていくことは重要なことです。それを実現、実践できるところが多摩地域ではないかと私は確信をしております。 現在、多摩地域においては、地元住民やNPOなど、さまざまな方たちが、環境、健康、持続社会を意識した活動を行っております。それらの活動は多摩地域にとどまらず、都心の人々も巻き込んだ、ドングリなどの広葉樹の植樹や炭焼きなどの活動、中央区と檜原村との連携した森林保全活動と、広がりを見せております。 本年二月に発表した緊急三カ年プラン、新戦略プログラムの中で、水源涵養、生物多様性保全など、森林の公益機能を回復させることを目的とした「四季彩(しきさい)の道」づくりの推進、広葉樹の植樹や炭焼きなどの農林業体験の場での自然との触れ合いを進めていくことも提案されています。 このようにさまざまな活動を展開する東京都においては、より多くの都民がかかわれるようにしていくことを考えていくべきではないかと思います。ぜひ、都民が緑に触れ、緑地保全活動へ参加できる取り組みを一層促進していただきたいと考えますが、知事の所見をお伺いし、私の質問を終わります。 ご清聴ありがとうございました。(拍手) 〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君)
尾崎大介議員の一般質問にお答えいたします。 多摩地域での緑地保全活動についてでありますが、緑はなぜか非常に、とても人の心に安らぎを与えるものであります。印象的だったのは、東京の自然保護レンジャーのリーダーを務めてもらっています野口健君が、念願のエベレストの登頂を果たして戻ったときに、あの年は非常に風が強くて、雪が少なくて、あちこちに死体が散乱していたそうでありますけれども、アイスホールをおり切ってベースキャンプに着いて、初めてそこで土の上に生えている小っちゃな草を見たときに、しみじみ自分が生きて帰ったという実感を味わったといっていますが、いずれにしろ、緑というのは、人間にとって、人間の感性にとっても非常に大事な存在だと思います。 都民が自然の保護のための活動に参加することは、環境に対する理解や健康増進の観点からも非常に意義があると思います。都においては、多摩の森林を広葉樹の森へ転換することや、里山を再生する試みなど、さまざまな緑地の保全、回復の事業を展開してまいっております。 これらの活動には、団塊の世代を初め幅の広い都民あるいは企業やボランティアなどの参加が見られますが、今後とも緑地保全活動に都民が積極的に参加できる仕組みを幅広く推進していきたいと思っております。 他の質問については、関係局長から答弁します。 〔産業労働局長成田浩君登壇〕
○産業労働局長(成田浩君)
多摩産材の活用についてなど、四点のご質問にお答えいたします。 まず、多摩産材の活用についてでございます。 住宅建築においては、現在、民間の製材所、工務店等が多摩産材を使った家づくりに取り組んでおりまして、都としても、現地見学会の開催を支援するなど、需要の拡大を図ってまいります。 また、公共施設におきましては、昨年十一月に設置した花粉症対策本部のもと、全庁的に多摩産材の利用を進めておりまして、保育園の木製遊具、道路の木製ガードフェンス、河川の流れを安定させる木工沈床等で活用しております。 さらに、本年度からは、多摩産材を使用した都立学校什器の標準規格を設定し、その活用を進めるなど、需要拡大に取り組んでまいります。 次に、多摩産材認証協議会及び認証制度についてでございます。 本協議会は、多摩地域の森林所有者、伐採業者、製材業者等民間の方々で構成されておりまして、登録事業者が取り扱う多摩産材に対して証明書を発行し、認証することにより、多摩産材の流通の拡大に努めているところでございます。 都は、多摩の林業振興の立場から、その設立過程から支援してきておりまして、今後は認証制度を関係業界に広く周知することにより、事業者の一層の参加を促してまいります。 次に、木質バイオマスエネルギー事業化調査実施後の取り組みについてでございます。 本調査は、製材等の過程で発生する端材等の有効活用に向けて、平成十四年に東京都農林水産振興財団が調査、検討したものであります。その後、本調査をもとに民間事業者が、端材を利用したストーブ用の粒状固形燃料─ペレットと申しますが─の製造を開始し、現在、年間約八十トンを製造しておりますが、都は、ペレットストーブの普及に努めてきたところでございます。今後とも、ご指摘のバイオマストイレなどを含め、木質バイオマスの有効活用について、普及、PRに努めてまいります。 最後に、クラインガルテンの現状と支援についてでございます。 クラインガルテンは、宿泊施設を備えた滞在型市民農園でありまして、都市住民が農山村の自然や生活文化に触れながら農業体験できる場であり、ドイツの市民農園が原型とされております。 都では、農山村活性化の観点から、かねてよりこのような体験交流施設の整備を支援してまいりました。平成五年にはあきる野市で開設されたほか、来春には奥多摩町でも開設予定であります。 この施設は、お話しの団塊の世代の受け皿としてばかりでなく、生産体験、食育の場としての機能を持つため、整備に取り組む農山村の市町村等を引き続き支援してまいります。 〔都市整備局長柿堺至君登壇〕
○都市整備局長(柿堺至君)
多摩産材を用いた東京の木・いえづくり協議会についてのご質問でございますが、協議会は、多摩産材を活用する住宅の供給促進を目的として、平成十三年に、木材供給者や工務店等の住宅生産事業者により設立され、毎年、その普及に向け、セミナーやイベントを開催しております。 昨年末には、新たな取り組みとして、一定割合の多摩産材を使用した家づくりに対し、民間金融機関と連携した優遇融資制度を創設しております。今後、花粉の少ない森づくり運動などにより供給の増加も見込まれることから、協議会の趣旨に賛同し、多摩産材に関する知識を有する工務店がより多くこの活動に参加することが期待されます。今後とも都は、多摩産材を活用した家づくりの普及に向け、協議会活動を支援してまいります。 〔環境局長大橋久夫君登壇〕
○環境局長(大橋久夫君)
地球温暖化対策に伴う自動車環境管理計画書制度についてのご質問でございます。 まず、この制度は、都内で三十台以上の自動車を有する事業者に対し、ディーゼル車規制への対応などの計画と実績の報告を義務づけたものでございます。今回の改正は、従来の内容に加え、自動車の燃料消費量や共同配送、エコドライブなど二酸化炭素削減対策について報告を求めているものでございます。これは、事業者みずからが二酸化炭素の排出量を把握することにより、自動車部門における自主的、積極的な二酸化炭素排出削減の取り組みを促すものでございます。 次に、事業者の積極的な取り組みを引き出す工夫についてでございます。 新たな制度では、事業者から実績報告を求めるだけでなく、二酸化炭素削減対策の取り組み状況についての評価結果を事業者本人に通知し、これを次年度以降の削減対策に活用できるような仕組みにしております。さらに、特にすぐれた取り組み内容や、その事業実施者を公表するなど、積極的な取り組みが社会的にも評価されるような制度運営を行ってまいります。
多摩産材の活用、取り組みについてお伺いいたします。 まず都としては、本年四月から始まった花粉の少ない森づくり運動において、向こう十年間で百八十万本の杉、ヒノキの伐採が計画されているわけですが、その中から材木として利用できる多摩産材の需要拡大及び市場流通の仕組みなどの整備が不可欠であります。 そこで、多摩産材の住宅建築の材としての使用や、さらに公園や学校など公共施設等における他の活用方法が検討されているのか、所見を伺います。 次に、具体的な施策として、多摩産材認証制度と東京の木・いえづくり協議会というものがございます。こうした施策により、多摩産材が市場において割安に供給をされ、一般に普及していけば、現在進行中の東村山本町プロジェクトという、知事の良質な住宅を安価に提供したいという思いから始まった重点プロジェクトの視点から見ても、非常に意義ある施策と思われますが、その内容、仕組み等については少しわかりにくい部分があります。 まず、多摩産材認証制度については、本制度のかなめの認証機関である多摩産材認証協議会の構成及び仕組みがいま一つ明確ではありません。社団法人全国林業改良普及協会の資料によると、京都府や群馬県などはそれぞれ府と県が直接認証団体にかかわっておりますし、愛知県の例では、認証機関として第三者のNPOが担っております。本協議会の場合、その構成メンバー及び認証の仕組み、都のかかわり方はどうなっているのか、また、今後の当制度への事業体などの積極的な参加の可能性について、所見をお伺いいたします。 次に、もう一つの施策である東京の木・いえづくり協議会についてですが、昨年十二月の都の報道資料によれば、優遇融資制度、とうきょうの森のいえを創設されていますが、融資条件として、本協議会会員が建築にかかわり、使用する木材の五〇%以上を多摩産材とすることとなっております。消費者である都民にとっても、多摩産材の知識や経験のある協議会の会員に希望に沿う住宅を建設してもらうことは非常に安心でき、さらに融資制度が受けられるとなれば、よりありがたい制度です。 現在協議会メンバーである工務店は十九社ということですが、融資条件が協議会の会員に限るということであれば、多摩産材に関する知識や経験を有するなどの条件のもとで、今後協議会の会員をふやしていく必要があると考えます。 また、この制度により、花粉の少ない森づくり運動で切り出される予定の多摩産材が有効に活用されることは、産業振興のみならず、環境面にも貢献することにもなります。 かような背景も踏まえ、この協議会の現状がどうなっているのか、また、今後より一層の組織の拡大が不可欠と考えますが、所見を伺います。 次に、多摩産材に関連し、木質バイオマスの活用についてお伺いいたします。 先ほど申し上げた花粉の少ない森づくり運動においての樹木伐採計画では、当然ながら利用できない木の量もかなりの量になると思われます。一方知事は、東京の温暖化対策として再生可能エネルギーの活用をうたっており、また国においても、本年三月三十一日付で、バイオマス・ニッポン総合戦略の改定も閣議決定されております。 木質バイオマスは生物の光合成によって生成した有機物ですが、環境にも優しい、非常にすぐれた持続可能な資源であります。先ほど述べた利用できない木とともに、多摩産材の材木製造工程における端材等も含め、これらを現在民間業者において生産がなされている木質ペレットストーブやボイラーなど、木質バイオマスエネルギーとして利用することも可能と考えます。 平成十四年に東京都農林水産振興財団においては、木質バイオマスエネルギー事業化調査を行っておりますが、調査後の現状はどうなっているか、またエネルギー利用のみでなく、木質チップを利用したバイオマストイレなどへの活用など、今後の木質バイオマスに対する都としての取り組みについて、所見をお伺いいたします。 以上、多摩産材、木質バイオマスの件に関して、もう少し大所高所からの東京における森林産業の総合的なグランドデザインを描き、特に、先般申し上げた多摩産材の商品としての需要拡大及び市場流通の仕組みの整備は重要であることから、そのための調査や横断的なビジョン策定へ向けての取り組みなども検討してみてはいかがという意見をつけ加えさせていただき、次の質問に移ります。 二〇〇七年には、全国で約七百万人、首都圏でも百八十三万人の団塊世代の退職が始まると予想されています。これらの定年退職者に対して意義ある第二の人生を送っていただく方策が必要かと思います。 最近では、定年退職者のレクリエーションのあり方や地域活動へのかかわり方など、さまざまな議論がなされています。その一つとして、森林や農地を活用して豊かなスローライフを実現するために、多摩地域の森林や農地で、多くの退職者が利用できるクラインガルテンのような滞在型農園の整備が必要だと考えます。クラインガルテンにおいて、退職者と地域住民やNPO等との活発な交流が生まれれば、社会とのかかわりが切れることなく、意義ある第二の人生を送ることができると思います。 また、こうしたクラインガルテンで炭焼きや竹林の手入れ、杉、ヒノキの伐採、広葉樹の植樹体験などと組み合わせれば、副次的効果として先刻の花粉の少ない森づくり運動の一環にもなり、ひいては森林環境の保全にもつながっていくと考えます。 現在、檜原村において、共同村星の見える丘プロジェクトという試みが、都内の団塊世代を中心にしたNPOや個人のグループなどで始まっております。具体的には、クラインガルテンなどを自分たちの手でつくり、高齢化して手入れが行き届かない山林を借りて植樹や炭焼きを行うなど、共同村で週末を過ごして、地元住民との交流を深める人も出てきています。 このような活動は現在個人のレベルによって行われていますが、最近の活動の広がりやその社会的な役割を考えれば、地元自治体や都が積極的にかかわることにより、より多くの団塊世代の方々が今後森林再生、環境保全活動などさまざまな社会貢献の機会を得ることが可能になるのではないかと考えます。 そこで、多摩地域におけるクラインガルテンについて、その現状と今後の都の支援について、お伺いいたします。 次に、地球温暖化対策についてお伺いいたします。 東京の深刻な大気汚染については、近年大きく改善が進む一方、自動車から排出されるCO2は、都内の総排出量の約二割を占め、依然として増加傾向にあり、自動車部門のCO2排出抑制対策は、今後も取り組みを強化すべき課題となっています。 都は今年二月に新戦略プログラムを発表し、自動車からの地球温暖化阻止を掲げ、新自動車環境管理計画書制度については、これまでの計画書制度を改正し、四月から導入されたもので、運送事業者などのCO2削減の取り組みを促すものと伺っております。既存の制度を活用することにより、早期に効果があらわれることを大いに期待しておりますが、今回の新しい計画書制度の内容とそのねらいについて、所見をお伺いいたします。 また、この計画書制度によって、運送事業者などの積極的な取り組みを引き出していくためには、まじめに取り組む事業者に対して何らかのインセンティブが働くことが重要と考えますが、所見をお伺いいたします。 こうした対策のほかにも、自動車からのCO2排出削減を進めていくために、天然ガス車などの導入を進めるためには、インフラとしての天然ガススタンドなどの設置も必要であります。国や都は、天然ガススタンドの設置に対して補助を行うなど、支援策を講じてはいますが、私の地元でもある調布圏内のように、まだスタンドのない空白地域もあることから、天然ガス車の導入、普及を進めるため、そうした空白地域の解消に向けて一層努力されることをあわせて要望し、最後の質問に移ります。 昨今において、ロハスという言葉がよく聞かれます。それはビジネスライセンスとして使われておりますが、その本質は、現在社会問題化している格差社会、勝ち組負け組という価値観とは異なり、地球環境保護と人間の健康を最優先し、持続可能な社会のあり方を志向するという考え方であります。 さて、このような考え方は、これまで私が質問してきた多摩産材、地球温暖化問題等をも包含する概念ではないかと思います。本定例会冒頭における知事の所信表明の中の、環境基本計画の改定での快適で安心して住み続けられることのできる都市を目指すことや、「東京都環境白書二〇〇六」での持続可能な都市づくりは、このライフスタイルに通ずるものであると考えます。 また、先ほど触れた二〇〇七年問題で、退職される団塊の世代の方々の第二の人生において、このようなライフスタイルが可能となるようにしていくことは重要なことです。それを実現、実践できるところが多摩地域ではないかと私は確信をしております。 現在、多摩地域においては、地元住民やNPOなど、さまざまな方たちが、環境、健康、持続社会を意識した活動を行っております。それらの活動は多摩地域にとどまらず、都心の人々も巻き込んだ、ドングリなどの広葉樹の植樹や炭焼きなどの活動、中央区と檜原村との連携した森林保全活動と、広がりを見せております。 本年二月に発表した緊急三カ年プラン、新戦略プログラムの中で、水源涵養、生物多様性保全など、森林の公益機能を回復させることを目的とした「四季彩(しきさい)の道」づくりの推進、広葉樹の植樹や炭焼きなどの農林業体験の場での自然との触れ合いを進めていくことも提案されています。 このようにさまざまな活動を展開する東京都においては、より多くの都民がかかわれるようにしていくことを考えていくべきではないかと思います。ぜひ、都民が緑に触れ、緑地保全活動へ参加できる取り組みを一層促進していただきたいと考えますが、知事の所見をお伺いし、私の質問を終わります。 ご清聴ありがとうございました。(拍手) 〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君)
尾崎大介議員の一般質問にお答えいたします。 多摩地域での緑地保全活動についてでありますが、緑はなぜか非常に、とても人の心に安らぎを与えるものであります。印象的だったのは、東京の自然保護レンジャーのリーダーを務めてもらっています野口健君が、念願のエベレストの登頂を果たして戻ったときに、あの年は非常に風が強くて、雪が少なくて、あちこちに死体が散乱していたそうでありますけれども、アイスホールをおり切ってベースキャンプに着いて、初めてそこで土の上に生えている小っちゃな草を見たときに、しみじみ自分が生きて帰ったという実感を味わったといっていますが、いずれにしろ、緑というのは、人間にとって、人間の感性にとっても非常に大事な存在だと思います。 都民が自然の保護のための活動に参加することは、環境に対する理解や健康増進の観点からも非常に意義があると思います。都においては、多摩の森林を広葉樹の森へ転換することや、里山を再生する試みなど、さまざまな緑地の保全、回復の事業を展開してまいっております。 これらの活動には、団塊の世代を初め幅の広い都民あるいは企業やボランティアなどの参加が見られますが、今後とも緑地保全活動に都民が積極的に参加できる仕組みを幅広く推進していきたいと思っております。 他の質問については、関係局長から答弁します。 〔産業労働局長成田浩君登壇〕
○産業労働局長(成田浩君)
多摩産材の活用についてなど、四点のご質問にお答えいたします。 まず、多摩産材の活用についてでございます。 住宅建築においては、現在、民間の製材所、工務店等が多摩産材を使った家づくりに取り組んでおりまして、都としても、現地見学会の開催を支援するなど、需要の拡大を図ってまいります。 また、公共施設におきましては、昨年十一月に設置した花粉症対策本部のもと、全庁的に多摩産材の利用を進めておりまして、保育園の木製遊具、道路の木製ガードフェンス、河川の流れを安定させる木工沈床等で活用しております。 さらに、本年度からは、多摩産材を使用した都立学校什器の標準規格を設定し、その活用を進めるなど、需要拡大に取り組んでまいります。 次に、多摩産材認証協議会及び認証制度についてでございます。 本協議会は、多摩地域の森林所有者、伐採業者、製材業者等民間の方々で構成されておりまして、登録事業者が取り扱う多摩産材に対して証明書を発行し、認証することにより、多摩産材の流通の拡大に努めているところでございます。 都は、多摩の林業振興の立場から、その設立過程から支援してきておりまして、今後は認証制度を関係業界に広く周知することにより、事業者の一層の参加を促してまいります。 次に、木質バイオマスエネルギー事業化調査実施後の取り組みについてでございます。 本調査は、製材等の過程で発生する端材等の有効活用に向けて、平成十四年に東京都農林水産振興財団が調査、検討したものであります。その後、本調査をもとに民間事業者が、端材を利用したストーブ用の粒状固形燃料─ペレットと申しますが─の製造を開始し、現在、年間約八十トンを製造しておりますが、都は、ペレットストーブの普及に努めてきたところでございます。今後とも、ご指摘のバイオマストイレなどを含め、木質バイオマスの有効活用について、普及、PRに努めてまいります。 最後に、クラインガルテンの現状と支援についてでございます。 クラインガルテンは、宿泊施設を備えた滞在型市民農園でありまして、都市住民が農山村の自然や生活文化に触れながら農業体験できる場であり、ドイツの市民農園が原型とされております。 都では、農山村活性化の観点から、かねてよりこのような体験交流施設の整備を支援してまいりました。平成五年にはあきる野市で開設されたほか、来春には奥多摩町でも開設予定であります。 この施設は、お話しの団塊の世代の受け皿としてばかりでなく、生産体験、食育の場としての機能を持つため、整備に取り組む農山村の市町村等を引き続き支援してまいります。 〔都市整備局長柿堺至君登壇〕
○都市整備局長(柿堺至君)
多摩産材を用いた東京の木・いえづくり協議会についてのご質問でございますが、協議会は、多摩産材を活用する住宅の供給促進を目的として、平成十三年に、木材供給者や工務店等の住宅生産事業者により設立され、毎年、その普及に向け、セミナーやイベントを開催しております。 昨年末には、新たな取り組みとして、一定割合の多摩産材を使用した家づくりに対し、民間金融機関と連携した優遇融資制度を創設しております。今後、花粉の少ない森づくり運動などにより供給の増加も見込まれることから、協議会の趣旨に賛同し、多摩産材に関する知識を有する工務店がより多くこの活動に参加することが期待されます。今後とも都は、多摩産材を活用した家づくりの普及に向け、協議会活動を支援してまいります。 〔環境局長大橋久夫君登壇〕
○環境局長(大橋久夫君)
地球温暖化対策に伴う自動車環境管理計画書制度についてのご質問でございます。 まず、この制度は、都内で三十台以上の自動車を有する事業者に対し、ディーゼル車規制への対応などの計画と実績の報告を義務づけたものでございます。今回の改正は、従来の内容に加え、自動車の燃料消費量や共同配送、エコドライブなど二酸化炭素削減対策について報告を求めているものでございます。これは、事業者みずからが二酸化炭素の排出量を把握することにより、自動車部門における自主的、積極的な二酸化炭素排出削減の取り組みを促すものでございます。 次に、事業者の積極的な取り組みを引き出す工夫についてでございます。 新たな制度では、事業者から実績報告を求めるだけでなく、二酸化炭素削減対策の取り組み状況についての評価結果を事業者本人に通知し、これを次年度以降の削減対策に活用できるような仕組みにしております。さらに、特にすぐれた取り組み内容や、その事業実施者を公表するなど、積極的な取り組みが社会的にも評価されるような制度運営を行ってまいります。